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ヘルプマークの誤認を招く?赤十字マークで法律違反?椎名林檎のグッズはなぜ炎上したのか

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ヘルプマークって、知っていますか?

長方形の赤い板に白い十字マーク、街中でカバンなどにつけて歩く人を見たことが一度はあるのではないでしょうか。

【画像引用元】ヘルプマーク 東京都福祉保健局

ヘルプマークは、意味もなくぶら下げているモノではありません。これ自体が人命を守ることにつながる非常に大切なモノなんです。

残念なことに、今回の事件はその重要性を危うくさせるものでした。

超人気歌手のグッズは何が問題だったのか?ファンやSNSの反応は?

一緒にみていきましょう。

椎名林檎のグッズが大炎上!炎上の理由は「ヘルプマーク」と「赤十字」

海をただよう白地に赤十字のうきわ国内に限らず海外でも人気の高い歌手「椎名林檎」。今回、3年ぶりともなる彼女のニューアルバムの発売が告知されました。

しかし、ファンにとって最高といえるはずの知らせは炎上し、今も批判の声は病みません。

椎名林檎のアルバム発表はなぜ炎上したのか?詳しく調べてみました。

事の発端は超人気歌手のグッズ販売告知

2022年10月7日、Twitterにある法人アカウントから人気歌手のアルバム販売に伴う告知が行われました。

告知されたのは、「椎名林檎」のオフィシャル・リミックスアルバム『百薬の長』。11月30日発売予定の音楽アルバムです。

超がつくほどの人気歌手のアルバム、それも2019年以来3年ぶりの発売ということもあり、ファンからは期待の声があがりました。

 

しかし、いざ詳細が告知されると該当ツイートは大炎上してしまったのです。炎上の原因は、アルバム特典のグッズにありました。

『百薬の長』は通常盤のほかに、3種のオリジナルグッズが付属する豪華盤が発売されます。いわゆる豪華盤特典というやつですね。

その特典グッズに「2つの大きな問題がある」と気づいた人々から指摘が噴出し、大きな批判・炎上につながったようです。その問題の内容がこちら。

  1. グッズのデザインがヘルプマークに酷似していること
  2. グッズのデザインに赤十字・白十字が使用されていること

上記2つの問題は、具体的に何がいけなかったのでしょうか。

人命や思いやりをつなぐ「ヘルプマーク」とは?

1つ目の問題は、「グッズのデザインがヘルプマークに酷似している」こと。

 

ヘルプマークとは、以下のような生活上配慮や援助を必要とする人が周囲からの助けを得られやすくするよう作成されたマークです。

ヘルプマークの対象者

  • 義手・義足・人工関節使用者
  • 内部障害・難病の人
  • 妊娠初期の人
  • その他配慮・援助が必要な人

見た目は、赤色の長方形に白十字と白ハートマーク。サイズや素材は、各自治体によって異なります。

ヘルプマークは各自治体から無償配布されています。Webサイトで売られていることがありますが、けして購入しないようにしてください。

最初に東京都が2012年10月に作成・普及活動を始め、徐々に全国の自治体へと輪が広がっていきました。

 

見た目ではわからない障害や病を抱える人にとって、周囲へ配慮や援助を求めることは非常に勇気のいることです。

また、周囲も「(見た目は問題なさそうな人に)助けが必要か」判断することが難しいと考えられます。

ヘルプマークは、その双方をつないでくれる重要な役割をもつマークなんです。

ヘルプマーク所持者へ実践したい配慮・支援

  • 電車やバスなど公共交通機関での配慮(席を譲るなど)
  • 駅や商業施設など人の多い場所での援助(階段昇降補助など)
  • 災害時の避難支援(自力避難が困難な人の支援など)

また、ヘルプマークは周辺への配慮をお願いするだけのものではありません。

ヘルプマークの中は文字が書けるようになっており、障害の詳細や緊急連絡先などあらかじめ記載しておくことができます。

意識喪失など自力で状況を説明できない時、救急や病院ではヘルプマークを確認することで迅速に適切な対処ができるんです。まさに「命綱」といえる存在なんですね。

 

2012年に自治体による積極的な普及活動が行われて以降、次第に人々の認識になじんできました。しかし、まだまだ知らない人や誤解されることも多いのが現状です。

そんな折、ヘルプマークに似通ったグッズが巷にあふれてしまったら、社会では何が起きるでしょうか。

「配慮が必要な人かと思ったら椎名林檎のファンだった。ややこしい」
「助けが必要なのに、椎名林檎グッズと見間違えられて気づいてもらえなかった」

配慮が必要な人の代弁者、また命綱として活躍するヘルプマークが、本来の働きをできなくなりますよね。多くの人の誤認を招く状況をうみだしてしまうでしょう。

 

当該のグッズは

「やっと普及しはじめたヘルプマークの存在や役割を無に帰してしまう恐れがある」

ものであることが、炎上の原因の1つになったと考えられます。

赤・白の十字マークが限られたデザインにしか使えない理由

2つ目の問題は、「グッズのデザインに赤十字・白十字マークが使用されている」こと。

意外と知られていませんが、実は赤十字マークの使用は法律によって厳しく定められているんです。

赤十字マークは、戦争や紛争などで傷ついた人びとと、その人たちを救護する軍の衛生部隊や赤十字の救護員・施設等を保護するためのマークです。

紛争地域等で「赤十字マーク」を掲げている病院や救護員などには、絶対に攻撃を加えてはならないと国際法や国内法で厳格に定められています。つまり、赤十字マークは、いざという時にわれわれ国民一人ひとりを守るマークなのです。

また赤十字マークは、病院や医療を象徴するマークだと思っている方も少なくないようですが、このようにとても大切な意味をもつマークであり、その使用については赤十字社と法律等に基づいて認められている組織に限られています。もちろん、一般の病院や医薬品などに使用することは禁止されています。

【引用元】赤十字マークの意味と約束事|赤十字について|日本赤十字社

赤十字は、人命を守ることに直接強く影響する重要なマーク。

そのため、日常生活上で人々に誤った認識や理解を与えないよう、

  • ジュネーブ条約
  • 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律

上記2つの法律によって「赤十字マークは正当な理由なく使用してはいけない」とされています。

以下の2つのマークも赤十字と同じ意味をもち、同じ扱いとなるので覚えておきましょう。

  • 赤新月:「十字はキリスト教を連想させる」ため、イスラム教国で使用されている。
  • レッドクリスタル(赤ひし形):2007年1月にジュネーブ条約の第3追加議定書にて新たに追加されたマーク。ひし形の中に自国独自のマークを入れて使用できる。

病院など医療関係の印象が強い赤十字マークですが、現実に使用されているのは赤十字社や自衛隊の衛星部隊などごく一部のみ。

実は街中を走る救急車にも、ほとんどの場合はついていません。

赤十字を使用できないケース

  • 病院・診療所(自衛隊や赤十字病院関係をのぞく)
  • 救急車(自衛隊や赤十字病院関係をのぞく)
  • 薬局
  • 市販の救急箱など医療用品
  • 市販の衣類・衣料
  • 企業のロゴ・ブランドマークなど
  • 医療や看護・救急のイメージ図・画像 etc

今回問題になったアルバム特典グッズには、3つの十字マークが使用されていました。

  1. ヘルプマークに酷似したカードケース(赤背景に白十字)
  2. 正方形のマスクケース(白背景に赤十字)
  3. 絵柄のはいったマスク(白背景に赤十字、赤十字上に個人のイラスト)

①は赤色系統の十字マークではないので、赤十字マークに関わる部分では問題ないでしょう。

②のはっきり描かれた赤十字マークは、ジュネーブ条約に準ずればアウトと判断されそうです。

③は赤十字の中に絵柄がありますが、赤十字マークはその存在意味から明確な規格がもうけられていません。寸法や形状が違えど「赤十字」に見えるものは大方NGとなります。

無断使用が法律違反になる赤十字マークの規定

  • 赤または赤色系統の十字、新月、ひし形(長さや形状・濃淡は問わない)
  • 赤十字の背景が白色系統(濃淡は問わない)
  • その他「赤十字マークを連想させる」類似マーク

赤十字マークは扱える組織が限られるため、私たちが日常生活で接する機会も自然とかぎられます。

そのため、赤十字が実はジュネーブ条約で固く制限されるものと知らない人が多いのは仕方のないことかもしれません。

しかし、デザインを扱う側がこの事実を知らなかったというのは、少々言い訳がたたないでしょう。

物議をかもしたグッズを販売した会社の見解は?

2つの理由から炎上した椎名林檎のアルバム特典グッズ。現状のままでは、人命軽視や法律違反を促しかねない状況です。

ファンやヘルプマーク所持者に限らず、この事実を知った多くの人から対応を求める声が上がりました。

多くの指摘を受け、販売元であるUNIVERSAL MUSIC STOREは10日、公式HPへ特典グッズに関する以下の告知文を記載しています。

椎名林檎オフィシャル・リミックスアルバム 百薬の長【UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤】に関するお知らせ
(2022/10/10)

11月30日発売の椎名林檎のオフィシャル・リミックスアルバム 「百薬の長」【UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤】に付属する特典グッズに関しまして、多くの皆さまから頂きましたご意見を踏まえ、弊社内で協議しております。改めてご案内させて頂きます。

【引用元】百薬の長【CD】【+GOODS】 | 椎名林檎 | UNIVERSAL MUSIC STORE

問題の重大性を考えると「協議」の文言が気になりますが、とりあえず対応に動いてくれたようで一安心です。

誰もが知る超人気歌手の限定グッズですから、ファンが安心して身に着けられるように良い方向へ再考していただきたいですね。

 

なお、グッズ販売ページでは、10日夜現在も予約可能なままになっています。

今回の話題への声や意見

椎名林檎という超大御所人気歌手のグッズとして販売されたこともあり、

「販売に至るまで誰もストップをかけなかったことがショック」
「誰も『ダメ』だと気づかなかったのか」

など非難の声や問題を指摘する声が強く上がっています。

一方で「ある意味ヘルプマークの周知につながってよいのでは」と擁護する声もでているようです。

しかし、誤認させるリスクの大きい周知は良い結果を招くとは考えにくいでしょう。

 

多くの人の目に留まる「人気歌手のグッズ」だからこそ、販売前の精査やチェックがなお重要であると感じさせられる事件でした。

赤十字だけじゃない!知っておきたい使用に注意が必要な15のデザイン

教会の中にたたずむラテン十字日常生活で使用が制限されるマークは、赤十字マークだけではありません。

うっかり使うと法律違反や宗教・文化の問題に発展したり、各団体・協会から訴訟される恐れのあるマークは多く存在します。

使用に注意が必要なマークとその理由

  • ラテン十字:キリスト教のシンボルである
  • ケルト十字:ケルト系キリスト教のシンボルである
  • 六芒星:ユダヤ教のシンボルである
  • 星と三日月:イスラム教のシンボルである
  • ハーケンクロイツ:ナチスのシンボル
  • ヴォルフスアンゲル:ヒトラーユーゲントなど禁止団体を表すマークである
  • アイアンクロス:ナチス時代の象徴(ハーケンクロイツと同時に使う場合のみNG)
  • ブラック・サン:12個の並んだハーケンクロイツに見える
  • ルーン文字(オダル・生・死):ナチスを連想させる
  • ルーン文字(SS):ホロコーストを連想させる
  • トリスケル:ハーケンクロイツに酷似している
  • ハンマースキンズ:白人至上主義団体のマークである
  • 菊花紋:天皇を表す紋章である
  • 家紋:武将の家紋であり、商標登録されているものがある
  • 代紋:反社会的勢力を象徴するマークである etc

つい最近では人気作品「東京リベンジャーズ」で

「コスプレ画像を反転状態でSNSに投稿するのは避けて!」

と話題になっていました。

これは衣装の一部に卍が使われているので、画像を反転させるとハーケンクロイツを身にまとう状態になってしまうためです。

有名な記号やシンボルマークは、その多くが深く長い歴史をもっています。それゆえに、現代では使用に制限や条件があるものも多く存在するんですね。

 

仕事でデザインしたり、個人の創作物を多くの人の目に触れさせる機会は生きていれば一度や二度は必ず生じるもの。

後々問題にならずにすむよう、法律や社会的タブーについて今のうちに頭にいれておきたいところです。

まとめ

車いすの男性と一緒にあるく女性ヘルプマークの重要性も、赤十字マークが厳しく管理される理由も、私たちの日常と接する機会はまだまだ少ないのかもしれません。

しかし、何も知らないからといって、ルールを破ったり、助けを求める声を無視していいわけではないですよね。

注目を集めやすい存在だからこそ、ファンに長く愛されてきた存在だからこそ、常に責任のある判断や行動をお願いしたいものです。

追記 10/18

10月18日、販売元であるユニバーサル ミュージック合同会社HPに以下のお知らせが掲載されました。

14日に東京都から「早急な対応を」と要請が出ていましたが、協議開始から8日たっての対応となりました。

日本赤十字社・東京都福祉保健局から指導があったこともあり、付属グッズのデザインはほぼ一新されていますね。不安だった箇所は無事改善されたとみて問題ないでしょう。

今後同様のことがないよう、再発防止につとめるとのことです。