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台風15号で静岡市清水区が長期断水!復旧は10月初旬?線状降水帯の怖さと家庭でできる浸水対策まとめ

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022年9月23日夜から翌日未明にかけて静岡県を襲った台風15号。

およそ半日足らずの間に16回もの記録的短時間大雨情報が発表された静岡市では、5日経った今でも断水・停電が続いています。

静岡市の現状は?断水がなかなか復旧しない原因とは?詳しく調べてみました。

台風15号の線状降水帯はなぜ長期断水をもたらしたのか?詳しく調べてみた

宇宙からみる台風ここ数年、豪雨や台風による被害は後を絶ちません。天候そのものを防ぐ手だてがないとはいえ、気象庁が事前に線状降水帯を予測するなど随時改善・対策がなされてきました。

それでも、災害そのものを完全に防ぐことは不可能。今回の台風15号も、静岡県内に甚大な被害を残していきました。

橋が崩落!長期断水!?台風15号がもたらした被害まとめ

23日夜に静岡県を襲った台風15号による大雨により、県内各地では土砂災害や浸水害による多くの被害が発生しています。

台風15号による被害まとめ

  • 浜松市天竜区で橋が崩落
  • 静岡市葵区で送電鉄塔2基が倒壊して大規模停電
  • 静岡市清水区の約6万3000戸で長期間の断水
  • 土砂崩れや道路の崩落で孤立する集落が発生
  • 倒木や土砂崩れ、道路冠水や床上・下浸水が発生

特に被害が甚大なのが、静岡市清水区の断水です。復旧にはかなりの時間を要することがわかっており、現地では生活に多大な支障がでています。

これほどの被害が生じた台風15号、通常の雨と比べてどれほど危険なものだったのでしょうか。

台風15号による線状降水帯はどれほど「危険な雨」だったのか

今回ライフラインが壊滅するほどの状況に陥った原因は、台風15号による線状降水帯にあります。

線状降水帯

次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。

【引用元】気象庁|予報用語

台風15号の影響で発達し続けた雨雲は、時速15kmほどの速度で静岡県を進行していました。これにより長時間雨雲が停滞しつづけ、記録的な大雨が生じたんです。

この猛烈な雨により、静岡県内の一部地域において23日夜から翌日午前2時までの間に約110~120ミリもの1時間雨量を観測。

気象庁は、24日午前2時19分に記録的短時間大雨情報を発表しました。

記録的短時間大雨情報が発表された11の地域

  • 静岡市
  • 掛川市
  • 島田市
  • 浜松市
  • 焼津市
  • 藤枝市
  • 磐田市
  • 牧之原市
  • 森町
  • 吉田町
  • 川根本町

1時間の雨量が20~30ミリ未満で「土砂降り」、30~50ミリ未満で「バケツをひっくり返したような激しい雨」。

50ミリ以上になるとマンホールから水が噴き、土石流が起きやすくなるなど車の運転が一気に危うくなるレベルです。

80ミリ以上は「恐怖を感じるほどの猛烈な雨」ですから、約110~120ミリという数字の異常さがよくわかるでしょう。

 

また、記録的短時間大雨情報は防災の警戒レベル4以上に相当する場合に発表されるもの。

発表時点で「即避難が必要」か「安全確保を最優先」な状況である地域が多くを占めていたことがわかります。

防災気象情報に基づく警戒レベル

警戒レベル5(大雨特別警報・氾濫発生情報など):

すでになんらかの災害が発生している可能性が極めて高く、直ちに身の安全を確保すべき状況

警戒レベル4(土砂災害警戒情報・氾濫危険情報など):

自治体が避難指示を呼びかける目安であり、避難指示を待たずに自ら周辺状況を確認・自発的に避難行動をとるべき状況

警戒レベル3(大雨警報・洪水警報など):

自治体が高齢者等に避難を呼びかける目安であり、高齢者等は避難指示を待たずに避難準備・行動をとるべき状況

実際、避難指示が出た地域では「すでに大雨や道路の冠水がやばくて避難できない」といった人もいたようです。

あまりの雨量に、東海道新幹線は23日午後10時頃に上下ともに全線で当日の運転中止を発表しました。

すでに夕方頃から遅延や運転見合わせが生じていたこともあり、多くの帰宅難民が出たようです。

大雨の際にしばしば発生する運転見合わせなどの規制。東海道新幹線では次のような基準で行われています。

・最高速度を70km/hに制限
過去1時間の降雨量の累計が50mm以上
連続降雨量が250mm以上かつ10分間雨量が2mm以上

・運転見合わせ
過去1時間の降雨量の累計が60mm以上
連続降雨量が300mm以上かつ10分間雨量が2mm以上
連続降雨量が150mm以上かつ時雨量が40mm以上

【引用元】「雨量計が規制値」でなぜ運転中止になるのか? | 乗りものニュース

安全に運行可能な1時間雨量が40ミリ未満ですから、110ミリの雨量がいかに異常で安全を脅かす雨量なのか伝わるかと思います。

断水の復旧は10月初旬?復旧に時間がかかる理由

異常ともいえる雨量を受け止め、崩壊してしまった被災地域のライフラインは復旧までにどれくらいかかるのでしょうか。

 

まず、電気については現時点で問題なく使える状況です。停電は県内のほぼ全域で解消されています(24日午後7時時点)。安定供給のめども立っていて、当面問題なしとのこと。

中部電力は土砂崩れで倒壊した送電鉄塔を絶縁することで、通常とは違う送電ルートの安定性を確保したそうです。

 

しかし、水道については「完全な復旧が10月初旬になる」と見られています。その原因は、2つ。

1つ目は、興津川からの取水が完全に断たれてしまったこと。

静岡市清水区は、区内を流れる興津川から上水道を取水する仕組みになっています(谷津浄水場 承元寺取水口)。

しかし、この興津川取水口に大雨で土砂や流木が大量に流入。取水口が詰まり、興津川の清流から取水できない状況になっています。

流木などの障害物を取り除こうにも、異常な雨量による冠水や山道周辺の土砂崩れのリスクから重機が現地に入れない状況なんです。

足場が悪い中、ひたすら人海戦術で障害物を取り除くしかない…となると、完全な復旧までにかなりの時間を要するでしょう。

2つ目は、和田島配水池からつながる水道橋が壊れてしまったこと。

承元寺取水口の上流には予備的取水口として、和田島浄水場から送水できる仕組みが用意されていました。

しかし、その水道橋は壊れ、水道管は川の増水により流失。隣接する宮島橋に仮説配管の設置をすすめていますが、工事完了から段階的な断水解消までやはり時間がかかりそうです。

追記

26日、静岡市清水区で起きた断水について9月29日~10月5日にかけて徐々に解消できる見通しが発表されました。

水道使用可能後もしばらくは生活用水に限定し、節水して使用するよう呼びかけています。

給水再開後は水の濁りが出る可能性が高く、あわせて目など粘膜へ触れる使い方は推奨されないのでご注意ください。

2つの給水手段を断たれてしまった静岡市清水区では、自治体や海上保安庁が各地に臨時給水スポットを設置。

しかし、水を求める市民の列は長く、4時間待ちといわれたり、30分で給水が終了してしまう場所もあったようです。

真夏ではないとはいえ、片付けなど疲労が重なる市民にとっては辛く、給水待ちの列で倒れる高齢者が出る事態に。

 

土砂災害などリスクを考慮すべきではありますが、一刻も早いライフラインの復旧が望まれています。

現地に広がる助け合いの声まとめ

そんな中、被災地や隣接する地域からは断水で困る人たちを支援する輪が広がっています。

できる限り最新の情報を載せたつもりですが、記載時点で支援が終了している可能性もあります。ご了承ください。

断水が解消されたとしても、その先には途方もない量の片付けが待ち受けています。片付けが無事終わったとしても、元の生活に戻るには心身とも時間が必要でしょう。

知っておきたい事前にできる3つの浸水対策

冠水した道路に立つ黒い靴の男性今回の線状降水帯で、床上・床下浸水の被害を報告する声が多く上がりました。

床下・床上浸水はたった一度でも起きると、家じゅうのあちこちがダメになってしまいます。

まず、家具・家電は全滅。壁紙や断熱材・石膏ボードは水を含んだ部分が機能せず、合板フローリングの床や建具は膨張・変形します。

水がひいて片づけた後も床下や壁の中の湿気はなかなか抜けず、最悪丸ごと住居建て替えを強いられることも…。

 

大自然の脅威から完全に身を守ることは至難の業ですが、事前に対策することで少しでも被害をおさえることは可能です。

そこでオススメしたい方法が、次の3つ。

  1. 家の近くの雨水ますを掃除しておく
  2. 土嚢を設置する
  3. 住む場所を事前に調査する

1つ目は、雨水ますを掃除しておくこと。

雨水ますとは、敷地内の雨水を1箇所に集め、排水管へ流す設備です。ます内は深さ20cmほどの深さになっており、誰でも簡単に蓋を開けられるようになっています。

形は丸が多く、今は白色のプラスチック製が主流です。古いお家だとコンクリート製のものも見かけますね。

 

雨水ますに流れ込む雨水は、どうしても土や葉っぱ、ゴミなどが混ざります。その雨水をそのまま排水管へ流すと詰まってしまいますよね。

その事態をさけるため、ます内の空間にいったん雨水を溜め、排水管へは不純物をのぞいた水が流れる仕組みになっているんです。

よって、雨水ますには雨のたびにいろんなモノが蓄積していきます。この蓄積したものをこまめに取り除いてあげないと、雨水ます自体が正常に機能できません。

敷地内の冠水を低減するためにも、日頃から雨水ますをこまめに掃除しておくことが大切なんですね。

雨水のお手入れは、ます内に溜まった土やゴミをスコップなどで取り除けばOK。

掃除は半年に1回もすれば十分ですが、梅雨時期や台風など雨量の多い時期は月に1度は確認しておくと安心でしょう。

2つ目は、土嚢を設置すること。

浸水が浅いうちは、家の入口に土嚢を設置することで雨水の侵入を防げる場合があります。天候にもよりますが、余裕があるうちに準備しておくと少し安心です。

土嚢の設置手順

  1. ブルーシートやビニールシートを侵入を防ぎたい場所に敷く
  2. シートの上に土嚢を並べる(縛り口は家側に向ける)
  3. 2列目は1列目の隙間をふさぐようにずらして並べる
  4. 土嚢を足で踏んで密着させる(隙間がないように)
  5. 積み終わったら敷いたシートでくるむ

土嚢をくるむシートはなくても大丈夫ですが、ある方が止水性があがりますよ。

土嚢は、次の方法で入手が可能です。

  • ホームセンターなどで購入
  • 袋と土を購入して自作
  • 地元の自治体に確認(配布しているところもある)

また、以下のものでも代用ができます。

  • 水入りポリタンク
  • 水入りゴミ袋+ダンボール箱
  • プランター
  • 長さ・厚みが十分な板
  • テーブル etc

3つ目は、住む場所・家を事前によく調べてから決めること。

個人の都合などあって難しいかもしれませんが、浸水害のリスクが低い場所に住むにこしたことはありません。

今後引っ越す可能性のある人は、事前に十分に調べてから選ぶことをオススメします。

地域の浸水害リスクを確認できるサイト

  • ハザードマップポータルサイト(国土交通省・各自治体)
  • 道路冠水注意箇所マップ(各地方整備局)
  • 道路防災情報マップ(国土交通省)
  • 地盤サポートマップ(ジャパンホームシールド株式会社)
  • 浸水キキクル(気象庁)

事前にハザードマップなどをチェックすれば、浸水害のリスクが低い地域を選ぶことは可能です。

実際に災害レベルの豪雨が発生した時に、キキクルなどリアルタイムの状況を知らせるサイトで確認してもよいでしょう。

あわせて、引っ越し候補地を訪れた際には次のポイントを確認してみてください。

現地で確認したいポイント

  • 敷地高が道路より低い場所がないか
  • 近隣住宅の壁に浸水の跡はないか
  • 建売なら玄関や窓の高さは道路から何cmか

新たに注文住宅を建てる予定なら、

  • 敷地のかさ上げや家屋を敷高にする
  • LDKなど主生活空間を二階に固める

なども対策として有効ですね。

 

住む場所は個人の希望や一存で決められないことも多いです。しかし、事前に浸水害リスクを知る・知らないでは実際に事が起きる時の対処に差が出ることも考えられます。

事前に調査した上で、これから住む場所についての理解をしっかり深めておきたいですね。

まとめ

大雨にうなだれる赤バラ災害の発生は、人の力でどうにもならない部分です。しかし、100%でなくとも事前に対策しておくことはできます。

今回の災害を対岸の火事と思わずに、日頃から防災意識を高め、準備しておくことが大切ですね。