お盆も終わり、夏も下火になっていく準備を始める時期。新潟県柏崎市の海水浴場で悲しい事故が起きました。
【16日午後】海で流され8歳男児死亡、救助向かった69歳祖父も 新潟・柏崎市https://t.co/v6dQDh5sZi
埼玉県に住む小学3年生の中村櫂斗くんは、祖父・隆さんと姉の3人で海水浴に来ていたという。柏崎市には16日、波浪注意報が出されていて、当時現場では波の高さが2メートルほどあった。 pic.twitter.com/xGLX1IUDOT
— ライブドアニュース (@livedoornews) August 16, 2022
まだ小学3年生の男の子とその祖父は、なぜ亡くなったのか?事故の経緯や現場の状況など詳しくまとめました。
「遊泳禁止」だったはずなのに…8歳の男の子と祖父がわずか数時間で亡くなった事故の経緯とは
事故の通報からわずか3時間。海水浴場へ遊びに来ていた2人の命が、海に奪われました。
この海で泳いだんか…
孫と祖父死亡って、孫の両親は辛いなんてもんじゃないだろうな https://t.co/FeBlK5hcLO— かも🚙🦆 (@musenbu1010) August 16, 2022
事故はなぜ起きてしまったのか?海水浴場が「遊泳禁止」になった理由とは?一緒にみていきましょう。
事故の経緯
2022年8月16日、新潟県柏崎市東港町にある柏崎中央海水浴場で起きた事故で海水浴客2名が亡くなりました。
1人は小学3年生の中村櫂斗くん(8)。もう1人は、祖父の中村隆さん(69)です。
午後2時20分頃、柏崎中央海水浴場から消防へ通報がありました。
「人が倒れていて意識や呼吸が無い。もう1名行方不明がいるようだ」
海水浴の最中、櫂斗くんが沖に流されて行方不明に。岸にいた隆さんは孫を救助するために海へ入り、身動きがとれなくなってしまったようです。
近くにいた人が沖合10mの海上で隆さんを救助・通報しましたが、すでに心肺停止で意識不明。柏崎市内の病院へ搬送後、死亡が確認されました。
さらに同日の午後5時頃、事故のあった場所から400mほど離れた浅瀬でうつぶせで倒れる櫂斗くんを上越海上保安署職員が発見。
こちらも救助後病院へ搬送されましたが、死亡が確認されました。
わずか数時間で祖父と孫2人の命をあっという間に奪っていった柏崎市の海水浴場はどんな場所だったのでしょうか。
柏崎中央海水浴場ってどんなところ?
新潟県柏崎市は日本海に面する新潟県海岸沿いのほぼ中央に位置する人口79,371人の街です。眼前にひろがる日本海を観光資源とし、市内に15箇所の海水浴場を有しています。
今回事件が起きた柏崎中央海水浴場(東港町)も、その1つでした。
柏崎市街地から近く、トイレやシャワー室、無料駐車場(464台)を完備。
400mの浜辺には海の家があり、毎年7月中旬~8月中旬の海開きシーズンには多くの海水浴客が訪れます。
海水浴場のすぐ近くにはレジャープールやキャンプ・BBQが可能な施設もあるので、海水浴以外の観光客も海を見に訪れた可能性が高いですね。
なぜ家族は「遊泳禁止」の海水浴場で泳いだのか
しかし、事故が起きた日は、けして「海水浴日和」ではありませんでした。
事故現場当時の状況
- 前日15日夜から翌日17日深夜まで波浪注意報が発表されていた
- 当日16日午前中は強風注意報が発表されていた
- 16日の最大瞬間風速は16m/s
- 事故が起きた午後1~2時の平均風速は3~6m前後
- 監視員不在時期だった
- 海水浴場には数人の客しかいなかった
事故の通報があったのは、午後2時20分頃。
当時この時間帯は柏崎市内に波浪注意報が発表されており、実際に白波が立つほど海は荒れていたようです。
波浪注意報
波浪注意報は、高波による遭難や沿岸施設の被害など、災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。
【引用元】気象庁|気象警報・注意報の種類
近隣住民も「朝から波が高く、海が濁っていた」と話しており、一目で危険を感じるほどの荒れ具合だったのでしょう。
このため、柏崎中央海水浴場は16日午後から「遊泳禁止」としていました。
しかし亡くなった2人は、この「遊泳禁止」になった海水浴場で海水浴を楽しんでいた最中に事故にあっています。なぜ「遊泳禁止」となっても、海水浴をやめなかったのか?
個人的な推測ですが、家族3人は海水浴場が「遊泳禁止」になったことに気づけなかったのでは?と考えています。
適切に管理された海水浴場の場合、遊泳可能エリア・遊泳禁止エリアを明確に示し、監視員を配置することが多いです。
海水浴場にある遊泳に関する情報
- 砂浜にささる赤黄フラッグ(遊泳可能エリアを示す)
- 海岸付近に掲げる赤フラッグ(遊泳禁止を示す)
- 海上に浮かぶブイ(遊泳可能・禁止エリアを示す)
- 海水浴場内に立て看板(遊泳可能・禁止時期を示す)
- 防災無線や監視員からの注意喚起 etc
柏崎中央海水浴場も例にもれず、人の多い時期・時間帯は監視員2名を配置しています。
【引用元】柏崎中央海水浴場【2022年度開設】|新潟の観光スポット|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ
では、死亡事故が起きた8月16日はどうだったのか。
海開き:2022年7月3日(日)
●監視員:7月16日(土)~8月15日(月) 9時から16時
(7月19日~7月22日、7月25日~7月29日は監視しません)【引用元】柏崎中央海水浴場【2022年度開設】|新潟の観光スポット|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ
監視員が配置されていたのは、ちょうど前日まで。海の安全を見守る人は誰もいない時に起きた事故だったんですね。
また、死亡事故報道後に自治体HPなど確認しましたが、当時「遊泳禁止」を発表した記録は確認できませんでした。
(私の見方が悪いのかもしれませんが)県外の私が結構頑張って探しても見つけられないなら、高齢者や子どもではなお見つけにくいのではないでしょうか。
仮に防災無線や市内放送で「遊泳禁止」と注意喚起していたとしても、当時は風速10m/sを超える強風です。放送音は風に流され、聞こえにくかった可能性も…。
遊泳禁止を示すフラッグや看板があったとしても、強風で飛んだり見えなかった可能性も考えられます。
当時家族が「遊泳禁止」の知らせを確認する術は、不運にも目に届かなかったのかもしれません。それでも、当時の強風や立つ白波はその身をもって確認できたはず。
埼玉県川越市からわざわざ遊びにきていたこともあり、「少々の悪天候なら」と強行してしまったのでしょうか。
海や山、川など大自然は人の都合なんて汲んではくれないもの。けして甘く見てはいけないと強く感じさせる事故でした。
今回の事故への声や意見
8歳の子どもと孫を助けようとした祖父が亡くなった今回の事故について、悲しみや自然の厳しさを訴える声があがっています。
12日に海岸みたけど白波たって
沖合も濁りあったからなぁ
お盆過ぎたら波は高いわクラゲ出るわ
地元なら近づかないけど
コロナでやっと帰省できてどうしても行きたかったのかな https://t.co/yDWahXzY1p— @gate (@0717gate) August 17, 2022
あぁ…亡くなっちゃったのね
ライフセイバーが15日までしかいなかったんだよね。海水浴って意外と短くて海開きから約1ヶ月なのよ。
もし監視員いないときに海に行くとしても絶対泳いだりしたらダメ https://t.co/tSlmXGRICK— kurumi∞ (@ryu_3558) August 17, 2022
一緒にいた姉の気持ちも
帰り待ってた両親や祖母の気持ちも……
みんなつらい https://t.co/j62RMwQwAe— lem 🦦 (@npysoo) August 17, 2022
昔、弟の同級生も海難事故で意識不明で運ばれたニュース見たから、ホント怖い、荒波だし、離岸流も多いんですよね。 https://t.co/TdQyfsEm4N
— しまねこ神社分社 (@StripeFelis) August 17, 2022
監視員がいない時期だったこと、盆は海が荒れやすいことなどを指摘する声が多いようです。
根拠のない自信を捨て、正しい知識と情報を元に冷静な判断をすることが命を救うことにつながると肝に銘じておきましょう。
安心・安全に海水浴を楽しむために知っておきたい3つのこと
色々と調べてみた結果、次の3つの行動が重要だとわかりました。
安心・安全に海水浴を楽しむための3つの行動
- 「管理」がされている海水浴場で遊ぶ
- 気象庁・自治体からの発信はこまめにチェックする
- 天候・海の様子を常に気にしておく
1つ目は、遊びにいく海水浴場は「管理」されている場所を優先的に選ぶこと。
「管理」された海水浴場について、海上保安庁は次のように示しています。
管理された海水浴場の特徴
①遊泳区域を示す旗(エリアフラッグ)が立てられている
②遊泳区域を示すブイロープが張ってある
③ライフセーバーや監視員等が常駐している(例:監視塔)
管理された海水浴場は遊泳可能エリアがはっきり目視でわかるので、うっかり沖へ進みすぎてしまうリスクを減らせます。
また、水難事故防止・人命救助のプロであるライフセーバー(水上安全法救助員)がいれば、万が一にも最善の手段で助けてもらえるでしょう。
主に夏に接する機会のあるライフセーバーですが、彼らを確保できないことを理由に海水浴場が遊泳禁止になることもあります。それぐらい重要な存在なんですね。
海水浴場が遊泳禁止に 感染拡大でライフセーバー確保できず
ことし、3年ぶりに開設された千葉県勝浦市の海水浴場では、新型コロナの感染拡大に伴って安全上、必要な数のライフセーバーが確保できなくなり、市は5日から今月10日までの間、海での遊泳を禁止としました。
JLA認定ライフセーバーがいる海水浴場については、以下を参考にしてください。
2つ目は、気象庁や自治体からの発信はこまめにチェックすること。
今回の事故現場は、前日夜から波浪注意報が出ていたことがわかっています。気象庁の発信する注意報や警報は「災害が発生するおそれ」を最速の形で伝えるもの。
けして軽く聞き逃さず、注意報や警報が発信されたら内容に応じて行動を控えましょう。その心がけが、自分や家族の命を守ることにつながります。
また、海水浴場に近づかない方がいいケースは天候不順に限りません。サメやクラゲなど海に入ることが直接ケガにつながりかねない状況も多々あります。
14日正午ごろ、相模湾の茅ケ崎沖でジェットスキーをしていた男性から「えぼし岩付近にサメがいる」と110番通報があった。県警のヘリコプターが上空から確認したところ、海岸から約1・2キロ沖合のえぼし岩付近に、シュモクザメとみられる魚影を発見した。確認されたのは30匹以上で、県沿岸部10市町の海水浴場で遊泳禁止や遊泳注意の措置を決めた。
このような場合、自治体が状況確認の上で遊泳禁止とするケースが多いようです。
天候が問題なければ、防災無線や市内放送は海岸線でも聞こえやすいはず。たとえ最高に遊びが楽しい時でも行動をとめ、しかと耳を傾けましょう。
自治体のSNS公式アカウントなど登録しておくと、リアルタイムで情報を得やすいのでオススメですよ。
・波浪注意報・強風注意報の時は海に近づかない
・サメやクラゲ大量発生などの情報が出たら海に近づかない
3つ目は、天候や海の様子を常に気にしておくこと。
どれだけ事前に気を付けていても、当日の天気や海の状況は直接見ないとわかりませんよね。遊び始めは問題なくても、時間の経過とともに悪化することも十分考えられます。
遊びに夢中になりたい気持ちはわかりますが、海という自然と関わる以上、常に気を張っておきましょう。
海と空から簡単に判断できる悪化の前兆や荒れたと判断できる点をまとめたので、一つの目安として参考にしてくださいね。
これを感じたら海から離れよう!
- 肌で感じる風が強くなってきた
- うろこ雲や積乱雲・レンズ雲が見える
- 一目でわかるほど波が高い
- 波の先が泡立って白く見える
- 海水が濁っている
他にも自分が本能で「危険だ」とわずかでも感じることがあれば、海水浴を即座に中止する判断が大切です。
まとめ
コロナ禍で帰省もはばかられる折、孫と過ごせる時間はきっとすごく大切なものだったはず。少しでも多くの思い出を残したいとのお出かけだったのでしょうか。
人間のどんな都合も思考も、自然は容赦なく飲み込んでしまいます。そのことはけして忘れないように生きていきたいですね。