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私有地の柿の木を伐採した犯人は撮り鉄!?マナー違反から前科付きにもなりうる撮り鉄問題をまとめてみた

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「一面に咲き渡る菜の花と雄大な自然を背景に走る列車の姿をカメラにおさめたい!」

その気持ちは多くの人に共感をえるものですが、今回の事件については誰1人理解をえられないでしょう。

私有地に侵入してまで柿の木を切りたかった理由とは?犯人と同じ趣味(と思われる)である層が起こしがちな問題って?

一緒にみていきましょう。

私有地の柿の木を伐採したのは特急やくも目当ての撮り鉄!?事件の経緯や理由をまとめました

夕焼けの中写真をとる男性その事件は、夏の日差しに咲き誇る花畑のそばで起きました。市内に走るJR伯備線の脇、私有地内に生える木が何者かに無断で伐採されてしまったんです。

伐採された理由は…なんと「自分が撮りたい写真のため」!?詳しく調べてみました。

事件の経緯

鳥取県西伯郡伯耆町(ほうきちょう)は、南北に日野川が流れる人口10,484人(2022年8月1日時点)の町です。

北東には雄大な伯耆富士(大山)がそびえ、春には町全体で270アールにもなる菜の花が黄色の絨毯となり、訪れる人を楽しませます。

2022年春頃、日野川に沿うように走るJR伯備線の線路脇で事件は起きました。

線路沿いの私有地に植えられていた柿の木が、持ち主の知らぬ間に勝手に伐採されていたのです。それも多少の枝ではなく、幹を根元に近い部分からバッサリ。

私有地の持ち主である男性(米子市在住)は、その日線路沿いに植わる柿の木が2本切られているのを発見しました。その後夕方すぎに通りかかると、さらにもう1本が…。

伐採された木は2本が地面から1~1.5mほどの長さに、1本は地面から10cmともはや切り株状態でした。木の切断面から、何者かがチェーンソーなどで切ったと見られています。

「『うそでしょ、冗談でしょ』と。最初は状況が飲みこめませんでした」

引用元:「うそでしょ、冗談でしょ…」私有地の木を勝手に切られる 迷惑撮り鉄が構図のために伐採か(BSS山陰放送) – Yahoo!ニュース

なぜ他人の私有地に侵入し、柿の木を何本も無残に切ったのか。

その犯人はまだ見つかっていませんが、この事件については「この土地ならではの推測」ができます。

 

「大山」「菜の花」…そして「列車」。そう、犯人は「撮り鉄」の可能性が高いと考えられているんです。

発端は「旧国鉄時代カラーの特急やくも復活」だった

2022年3月19日、とある列車が懐かしい姿で線路上にお目見えしました。

その名は「特急やくも」。クリーム色に赤いラインの入った車体は、旧国鉄時代のカラーリングです。

運転開始50周年記念企画により、特急やくもは岡山駅と出雲駅の間を1日2往復の運行が開始されました。

2024年春までの期間限定ですが、1973年当時の列車が現代に姿をあらわすとなれば鉄道を愛する人々にとってはたまらないイベントです。

その姿をフレームにおさめようと、連日多くの撮り鉄が線路脇へ訪れていました。

撮り鉄とは

鉄道を愛する人々を「鉄」とよび、中でも特に列車撮影を趣味にする層は「撮り鉄」とよばれています。

特急やくもが走る姿を撮れる場所はいくつもありますが、特に人気なのがJR岸本駅から北へ広がる菜の花・ひまわり畑。

伯耆町の景観形成作物栽培促進事業により育てられた菜の花やひまわりは、観光客に人気のスポットとなっています。

旧国鉄カラーの特急やくもが走り始めた春は、ちょうど菜の花最盛期。

雄大な大山を背景に菜の花絨毯を走り抜ける特急やくもは、撮り鉄にとっても最高の撮影スポットなのでしょう。連日多くの撮り鉄が訪れていたようです。

 

そんな中起きた「柿の木伐採事件」。該当の柿の木は、ちょうど列車にかぶってしまう位置にありました。

私有地に侵入した犯人は特急やくもと景色を完璧な構図で撮りたいがために、撮影に邪魔な柿の木を伐採したのでは?と考えられています。

引用元:大山にかけられた黄色の魔法 菜の花の絨毯でちょっぴりシアワセな気分に

町全体で270アールにもなる花畑は、町の活性化への思いもこめられて大事に育てられたもの。

本当に「花と列車の写真をとりたい」がために私有地の木が切られたのなら、そんな悲しいことはありません。

観光客や多くの撮り鉄はマナーを守って楽しんでいるのに、今後なんらかの規制がかかる可能性も考えられるでしょう。

 

この事件に現地からは怒りや悲しみの声があがり、木を切られた土地主の男性は警察に相談しています。

犯人の手がかりはまだ見つかっていないそうですが、できれば心から反省して自首してほしいですね。

他にもあった撮り鉄マナー問題

実は、今回の事件の他にも撮り鉄によるマナー問題は起きていました。

撮影スポットの近くへ行くために、車で来た撮り鉄たちが近隣の道に路上駐車してしまうそうなんです。週末にもなれば、その数は20~30台にも…。

JR伯備線の線路脇道路は車2台がすれ違うのにギリギリ、道によっては車1台が通るのがやっとな場所もあります。

当然ですが、田んぼや畑の脇の道路は無料駐車場ではありません。現地の住人や畑の管理者が使う生活道路なので、観光客が好き放題停めていい場所ではないんですが…。

この件をうけ、JR・警察は協力して注意喚起やパトロールを行っています。しかし、現地にそんな手間をかけさせず、マナーを守って楽しむのが本来のあり方であるべきでしょう。

今回が初めてじゃない?『やりすぎ!』撮り鉄事件

残念なことに、一部の撮り鉄による被害はこの地域に限った話ではありません。

2022年4月2日、東京都八王子市にある八王子駅で、E653系の臨時特急『いわき』が走行。

駅のホームには、旧国鉄時代のリバイバル編成が走行すると知った鉄道ファンが多数押し寄せました。

車両付近に集まったのは、鉄道を撮影することが好きな、通称『撮り鉄』。FNNプライムオンラインによると、30人ほどが密集していたといいます。

『撮り鉄』の一部の人が点字ブロックを越えて列車を撮影していると、カメラを持って身を乗り出していた1人の男性が線路に転落。

幸い、駅員3人の助力によって男性はホームによじ登ることができましたが、人身事故につながっていた可能性もあったでしょう。

引用元:『撮り鉄』殺到し、押された男性が転落 映像に「ゾッとした」「信じられない」 – grape [グレイプ]

 

東急目黒線の武蔵小杉〜元住吉駅間にある武蔵小杉1号踏切道(神奈川県川崎市)で、5月15日、踏切の警報機によじ登り、撮影をしていた「撮り鉄」がいたとして、ツイッター上で非難の声が上がっている。

東急電鉄の担当者によると、踏切障害物検知装置が作動したことにより、緊急時に発光する特殊信号発光機が動き、列車は踏切の約15メートル手前で停車したという。

その後、担当乗務員が乗務員室から顔を出し、遮断機付近にいた人たちに対して、踏切道の外に出るように大きな声で注意したとのことだ。

引用元:踏切の警報機によじ登る「撮り鉄」、東急電鉄が苦言「ルールを守り、安全に撮影を」(弁護士ドットコム)東急目黒線の武蔵小杉〜元住吉駅間にある武…|dメニューニュース(NTTドコモ)

 

2016年4月の話だが、列車の撮影のために菜の花を踏み倒して敷地に入っていた撮り鉄に対して、真岡鉄道(栃木県)が公式facebookで「綺麗に咲いている菜の花を踏みにじって何も感じないのでしょうか?」と呼びかけた。 公式Facebookには、踏み倒された菜の花の写真が掲載され、同社の敷地内に侵入する撮り鉄に対して注意喚起した。

引用元:こりない「迷惑撮り鉄」たち…ホームに脚立が乱立、警報機によじのぼって撮影(弁護士ドットコムニュース) – Yahoo!ニュース

もはや犯罪行為に近い挙動を行う一部の撮り鉄のために無用な規制が行われば、ルールを守って楽しむ層にまで影響が及びます。

 

個人の趣味が生活を支えるインフラの潤滑な運行に影響することなど、本来あってはならないこと。

撮り鉄に限った話ではありませんが、趣味を楽しむ時は今一度周りをよく確認してほしいものですね。

今回の事件への声やニュース

今回の事件について、以前からさまざまな問題を起こしがちな撮り鉄への批判の声があがっています。

犯人が捕まったわけではないので、撮り鉄がやったという確証は未だありません。しかし、これほど強い推測が飛び交う事実は重く受け止めるべきでしょう。

他にもあった!「よくある」撮り鉄問題

線路を通過する赤い電車今回の事件は個人への被害ですが、一部の撮り鉄による問題はインフラである列車運行会社にも及んでいます。

本家本元の列車運行会社へ迷惑をかけるのは、もはや「鉄道ファン」と呼称すべきなのか?

そんな疑問を感じつつ、嘆かわしくも「よくある」撮り鉄問題について、まとめてみました。

線路(敷地内)立ち入り行為

「通常では難しい写真を撮りたいから」
「他人とは違う特別な写真を撮りたいから」

このような身勝手な理由から、一部の撮り鉄による線路や車両保管庫への立ち入りは後をたちません。

運転士「皆さんのために、電車止めてるんですよ」

3月24日は、定期運行を終了した185系電車を長野総合車両センターで解体するため、回送電車を運行していた。その写真を撮ろうと、撮り鉄らが集まったらしい。

実際は、緊急停車した電車は、185系ではなく、乗客を乗せていた。JRによると、車両点検の影響で185系の発車時間が遅れ、今回の電車の後続を走る予定だった。185系は、緊急停車からしばらくして中央線を走るのが目撃されている。

JRでは、線路に立ち入ったのが撮り鉄だったかは確認していないとしながらも、「線路内への立ち入りは危険ですので、絶対に止めるようお願いしています」と話した。

引用元:撮り鉄集団に運転士が「公開説教」 「ルールを守ってないから…」線路侵入で警察沙汰に: J-CAST ニュース【全文表示】

当然ですが、予期せぬ人の立ち入りがあれば運行の妨げとなりますし、最悪死亡事故につながるおそれもあります。

安全で潤滑な運行を日々実現するために、線路上の落とし物1つでも列車を停めざるをえない時だってあるんです。

人が立ち入ればどうなるか、想像できないものなのでしょうか…。

 

線路内への理由なき立ち入りは、鉄道営業法による罰則の対象となる場合があります。(鉄道営業法第37条による鉄道営業法違反)

科料は1000円以上1万円未満と低めですが、刑罰なので「前科持ち」になりうるということは知っておくべきでしょう。

また、過失往来危険罪や建造物侵入罪・住居侵入罪に該当する可能性もあります。軽い気持ちでやったとしても、その代償は重いです。絶対にしないように。

キセル(乗車)行為

キセル乗車とは「本来払うべき区間運賃を払わずに電車移動する行為」を差します。いわゆる不正乗車行為ですね。

不正乗車行為(例)

  • 入場駅・降車駅にそれぞれ近い2枚の切符(または定期券)を購入・利用し、本来の区間運賃の支払を逃れる
  • 出場・降車時にほかの乗客の背後につき、運賃を支払わずに改札を通過する
  • 定期券に記載される経由ルートと違うルートで移動する
  • 使用期限の切れた定期券で移動する(有人・無人の手動改札など)
  • 他人名義の定期券を使って移動する

こちらの行為も一部の撮り鉄の間で横行し、暴行や強盗事件に発展することもあるようです。

キセル乗車を通報されたことに腹を立て、少年2人に暴行しカメラを脅し取るなどしたとして、警視庁少年事件課は4日までに、相模原市の高校3年の男子生徒(17)ら少年5人を強盗などの疑いで逮捕した。1人は容疑を一部否認している。

逮捕容疑は2月21日、JR東京駅構内で少年2人からデジタルカメラなどを脅し取ったり、腹や顔を殴ったりした疑い。

同課によると、逮捕された少年らは列車を撮影して楽しむ「撮り鉄」で、うち2人が2月11日、キセル乗車で東京駅から金沢駅へ向かった。

顔見知りだった被害者らが、新潟県内の駅で2人を見かけ、駅員に通報した。同課によると、逮捕された少年らは「キセルを通報するなんて撮り鉄界のタブーを犯した」などと動機を供述しているという。

引用元:キセル通報逆恨み「撮り鉄」少年ら逮捕 強盗容疑: 日本経済新聞

こちらも、当然ですが鉄道営業法違反となります(鉄道営業法第29条)。本来払うべき運賃を払っていないわけですからね。

おそらく「撮影時・駅移動時にかかる運賃や入場料を節約したい」などの気持ちから生じる行為だと推測できますが…。

列車を愛する鉄道ファンが列車運行会社に落とすべきお金を落とさないということの何がタブーなのか、正直理解しかねますね。

 

不正乗車が発覚した場合、不正乗車した区画の運行会社へ3倍(正規料金+2倍の料金)の運賃を支払う必要があります(旅客営業規則第264条)。

さらに、場合によっては詐欺罪や詐欺利得罪に問われ、前科がつく可能性もあります。

どの面から考えても、運賃のごまかしは違法行為に他なりません。こちらも絶対にしないでくださいね。

まとめ

桜を背景に菜の花畑を走り抜ける黄色い電車個人の趣味のために他人の私有物を勝手に破壊するなど、けしてあってはならないことです。

このような行為は本来無用な規制を生じさせ、ルールを守る撮り鉄や日々鉄道を利用する層に影響を与える可能性も高いでしょう。

今後、二度と同様の事件が起きないことを願うばかりです。