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車内放置の熱中症で2歳姉と1歳弟が死亡した事件の犯人がついたウソと真実とは

14記事目のアイキャッチ

35度を超える猛暑日が続くなか、毎日一度は耳にする「熱中症」

メディアや病院が積極的にその危険性を訴えるなか、あまりに痛ましい事故が起きてしまいました。

わずか2歳と1歳の子どもの命をうばった熱中症。しかし、この事件には他とは違う「単なる事故とは言い難い」点があったようです。

事件の経緯や真相について、詳しくまとめました。

2歳姉と1歳弟の命を奪った熱中症は「事故」だった?真相を隠すために犯人がついた「ウソ」とは

置き去りのくまのぬいぐるみ熱中症の危険性を毎年メディアが周知しているにもかかわらず、悲しい事故は例年後を絶ちません。

先月末・今月初めに1歳の男の子と2歳の女の子が亡くなったのも、熱中症でした。熱中症の原因は、車内気温の急激な上昇によるもの。

発見・通報した2人の母親は「そばにいたけど気づけなかった」と言っていますが…?詳しく見ていきましょう。

事件の経緯

2022年7月29日午後4時50分頃、神奈川県厚木市「ぼうさいの丘公園」の駐車場で1件の通報がはいりました。

「子どもがぐったりしている。意識がないようだ。」

通報を受けてかけつけた消防は、駐車場内にとめてある車の中に意識不明状態の子どもを2名発見。

救急搬送されましたが、当日に1歳の男の子は死亡、8月2日朝4時頃に2歳の女の子も死亡しました。死亡の原因は、熱中症に伴う多臓器不全とみられています。

亡くなったのは、長沢煌翔(こうが)くんと姫梛(ひな)ちゃん。まだ2歳と1歳の幼い姉弟です。

通報した2人の母親は、当時警察へ次のように話しました。

「公園へ遊びに来たが、着いたら後部座席の子どもたちが寝ていた。」
「そのまま30分ほど、車内で子どもと一緒にいた。クーラーをつけずに窓を開けて、スマホで時間をつぶしていた」

7/29当日の厚木市の最高気温は33度。現場のぼうさいの丘公園は北・西・東側に駐車場がありますが、どこも野外で屋根はありません。

 

【ぼうさいの丘公園 北西駐車場の様子】

炎天下にあった車内の温度はたとえ窓を開けていても、わずか15分で45度近くまで上昇したと考えられます。

これは、モバイルバッテリーやスプレー缶の発火事故すら招きかねないような温度です。

幼い子どもたちが熱中症になっても仕方のない環境だった、といって差支えないでしょう。

 

しかし、ここで疑問が残ります。

エアコンなしでは45度近くまで上昇する車内に、母親は30分も子どもたちと一緒にいたのでしょうか。

そんなサウナのような環境で、本当に子どもたちがすやすや寝ていられたのでしょうか。

 

そう、この件は単なる「炎天下の駐車場で起きた熱中症による死亡事故」ではなかったんです。

犯人がついた「ウソ」とは?真相はこうだった

「サウナのように高温だったはずの車内」で2人の眠る子どもたちを見ながら30分過ごしていたという母親。その様子は、取り乱すこともなく、至極落ち着いていました。

消防が駆けつけた時に車の窓は閉じていたなど、母親が話した内容には他にも多くの矛盾があったそうです。

 

その後の警察の聴取・調査などにより、母親は子どもを乗せた車を知人宅⇒ぼうさいの丘公園へ移動させてから通報したことが発覚。

「公園内の駐車場で子どものそばにいた」は「ウソ」であり、実際には次のような行動をとっていたことがわかりました。

  1. 子ども2人を車に乗せて知人の男性宅を訪ねた
  2. 子ども2人は車に残し、男性宅へ
  3. 約1時間後に男性宅から車に戻り、ぐったりした子どもたちを発見
  4. ぼうさいの丘公園の駐車場へ車ごと移動し、消防へ通報

この事実が判明後、2人の母親である長沢麗奈(21)は、保護責任者遺棄の疑いで逮捕されました。

母親は警察の調べに対し、「放置したのは間違いない」と容疑を認めているとのことです。

 

知人宅の駐車場に屋根はなかったのか、風通しがどうだったのか、当時の車の詳細な状況はわかりません。

しかし、子どもたちが車内に残されたと考えられる午後4~5時は、陰りつつあるといってもまだ明るく、気温の高い時間帯。

まともに考えれば、たった5分でも子供を放置していくことが危険だと気づけたはずです。

 

なぜ子どもを車内に放置してしまったのか?理解しがたい長沢容疑者の行動による事件は、実はこの1件だけではなかったんです。

事件は未然に防げたのか?見え隠れしていた「ネグレクト」

逮捕された母親が「自分の子どもを車内に放置した」のは、今回が初めてではありませんでした。

同年の7月8日、寒川町の商業施設内駐車場にとめた車内に煌翔くんを放置。煌翔くんの泣き声に気づいた近隣住民の通報により、駆けつけた警察が保護しています。

その際に母親は、こう話したそうです。

「起こすのがかわいそうだと思った」

警察から「車内に放置する行為はネグレクト(育児放棄)にあたる」との注意を受け、その時は反省した様子をみせていた長沢容疑者。

「二度としない」など書いた上申書も警察へ提出していました。

煌翔くんの体に虐待の跡はなかったようですが、この件について警察は7月14日に厚木児童相談所へ通告しています。

通告とは、

虐待を受けたと思われる児童を発見したら、福祉事務所または児童相談所へ連絡する

ことです。

児童福祉法第25条に基づき、国民には

児童虐待を受けたと思われる児童を発見したら、必ず福祉事務所または児童相談所へ通告する

義務があります。

通告により、管轄の厚木児童相談所は「ネグレクト」として認定し、7月中旬より調査を開始。実は、事件当日の午後4時20分頃も母親に電話で連絡していたそうです。

しかし、母親は電話に出ず…。後日判明したことが真実なら、知人男性宅で話に花を咲かせていたのでしょうか。

残念なことですが、警察による1度目の注意は全く響いていなかったのかもしれませんね。

 

二度にわたり、子どもを車内に放置した長沢容疑者ですが、一方で近隣住民からの印象はけして悪いものではなかったようです。

「普通の子育てしているお母さん」

「(子供は)にこにこしていて、元気でかわいいらしくて」

「正直面倒見がよくて、ちゃんと毎週のように遊んでいた」

「どっか行くときも子供と一緒にいっているイメージ」

引用:日テレNEWS24

周りが見た通り、本当に子どもたちを愛していたのでしょうか。たとえそうだとしても、己の選択や行動が幼い命を失わせた事実は変わりません。

警察に虚偽の発言をした事実をみても、本当に反省していたと考えるのは難しいように感じました。

今回の事件に対する声や意見

本来守る側の母親の行動によって幼い姉弟の命が失われた今回の事件について、さまざまな声があがっています。

また、通告を受けながら事件を防げなかったことについて、厚木児童相談所は「非常に重く受け止めている」とのことでした。

 

1度は近隣住民の気づきで救われた命が、2度目の今回は続かなかった。もしかしたら、私たちが知る以前にも同様の行動をしていたかもしれません。

今後、今回のような悲劇を起こさないために、私たちは何ができるのでしょうか。

「児童虐待かも」赤の他人ができる3つの行動とは

大きな手のひらに重なる小さな手今回の事件で買い物中に車内放置した母親の行動について、警察は「ネグレクト」と判断し、児童相談所へ通告しています。

この「ネグレクト」、そもそも一体なにを指すのか?ご存じでしょうか。

 

厚生労働省では児童虐待について、大きく4つに定義しています。

身体的虐待

殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる など

性的虐待

子どもへの性的行為、性的行為を見せる、ポルノグラフィの被写体にする など

ネグレクト

家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など

心理的虐待

言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子供の目の前で家族に対して暴力をふるう(DV)など

引用元:子ども・子育て 児童虐待防止対策-厚生労働省HPより

今回は、まさに「自動車の中に放置する」が該当するので、ネグレクトと判断されたんですね。

しかし、傷やあざなどわかりやすい身体への虐待痕が必ず、あるいはすぐに見つけられるとは限りません。

心理的虐待やネグレクトなど、周りから見て「虐待だ」と即座に判断しにくい時はどうすればよいのでしょうか。

2つの代表例をまとめてみました。

車に取り残された子どもを見つけたら

今回のように「車に取り残された子どもを発見」したら?次の行動をとることをオススメします。

車に取り残された子どもを発見したら

  1. 近くに保護者がいないか確認
  2. すぐ見つからない時は警察に通報
  3. 施設内駐車場であれば、施設員にも連絡

よくドラマや映画などで「車内の子どもを救出するために窓ガラスを割る」描写がありますが、この方法は避けた方が賢明です。

発見時点で放置時間や車内の状況は判断しづらく、後々「緊急性がないのに車を破壊された!」と器物損壊罪で訴えられる可能性も。

子どもたちの安全を第一に行動するためにも、まずは警察へ連絡しましょう。

警察に詳細の状況を伝え、指示をあおいだ上で行動してください。警察は現地にすぐ駆けつけますし、消防と連携して救急車など手配をしてくれます。

熱中症など警察を待っては子どもの命が危ないと判断されれば、窓を割るよう指示があるかもしれません。

 

もし発見者が複数名いるなら、片方は警察と連絡をとり、片方は保護者の呼び出し放送など施設に依頼してもよいでしょう。

子ども発見時のマニュアルを整備している施設は多いので、然るべき対処をとってくれますよ。

 

緊急性が高い時ほど単独で行動せず、冷静かつ周りを巻き込んでいくスタンスを忘れずにいたいですね。

「ご近所さん」でネグレクトを見かけたら

  • 子どもの泣き叫ぶ声や保護者の怒鳴りつける声が頻繁に聞こえる
  • もう暗い時間帯なのに家の扉の前にずっと一人で座っている
  • 痩せこけて顔色が悪く、ケガの手当が長くされていない

車内放置や身体にのこる虐待痕と違い、その子どもが「まともに衣食住を与えられているか」判断するのは非常に難しいですよね。

しかし、同じ状況が何か月も続く、衛生面や食事面が保たれていないなど「おかしい」と感じたら迷わず行動することが大切です。

近所でネグレクトが起きているかもと思ったら

  • 子供家庭支援センターまたは児童相談所へ連絡

先述のとおり、立場に関わらず全国民には「児童虐待と思う状況があれば速やかに通告」する義務があります。

無用なトラブルや事態の悪化を避けるためにも、まずは連絡してみましょう。最寄りの児童相談所に直接かけても、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)でもかまいません。

連絡した側の情報が相手へバレることはないですから、安心して通告してください。

 

あなたの「もしかしたら…」が、子どもの命や人生を救うことにつながるかもしれません。

まとめ

誰もいない公園と2つのブランコあまりに身勝手な行動で失われた2つの命と、暴かれたいくつものウソ。自分の子を失ってからついたウソで、いったい何を得ようとしたのでしょうか。

このような悲しい事件が二度と起きないよう願うばかりです。