穏やかな日本海に浮かぶ小さな島と本土の海岸線を結び、生活や人をつなぐために日々走るフェリー。
その生活の生命線ともいえる船を運航・管理する会社で、ある事件が起きました。
「仕事で休日もなく もらって当然」給与水増し約2300万円 懲戒解雇の部長「ぜいたくな旅行や車に使った」(BSN新潟放送https://t.co/Vx8JKP49ac #給与水増し #不正受給 #懲戒解雇 #粟島 #粟島汽船 #新潟
— BSN News ゆうなび (@bsnhodo) July 15, 2022
事件の経緯は?何故不正受給は行われてしまったのか?詳しく調べてみました。
約2300万の不正受給はなぜ起きた?粟島汽船で何があったのか詳しくまとめました
事件は、新潟県粟島浦村にある粟島汽船株式会社(あわしまきせん)で起きました。役職者2名の懲戒解雇処分に刑事告訴も視野…けして穏やかな状況ではありません。
いったい何故このような事件が起きてしまったのでしょうか。
粟島汽船ってどんな会社?
粟島汽船株式会社は、昭和28年(1953)年5月1日に創立された旅客定期航路事業を主とする会社です。
旅客定期航路事業とは
13人以上の旅客定員を有する船舶(旅客船)により、2地点間や寄港地などの決まった航路を運航する事業です。
定期的に決まった航路で不特定多数の人々を乗せて運ぶフェリーや水上バス、定時運航の遊覧船がこれにあたります。
今年(2022年)で創業69年ということで、かなり歴史ある会社のようですね。
粟島汽船株式会社が運航する旅客船は粟島と本土の間を移動する唯一の交通手段で、粟島の住人や観光客を日々運んでいます。
粟島の人にとっては、文字通り「生命線」のような存在なのでしょうね。
粟島汽船株式会社は新潟県と粟島浦村の両方から出資を受ける第三セクターで、社長も粟島浦村の村長さんが務めています。
第三セクターとは
国または地方公共団体と民間企業が力をあわせて同じ事業を行う公私混合企業のこと。
粟島を実際にとりまとめる方ですから、生活の基盤ともいえる旅客船をより良く運航していく判断をしてくれそうです。
そんな人が経営する企業で、いったい何が起きたのでしょうか。
事件の経緯
2022年7月15日、粟島汽船株式会社は「根拠のない手当等を不正に受給していた」として、2人の職員を懲戒解雇処分にしたと発表しました。
事件の経緯は、以下のとおり。
事件の経緯
- 処分になったのは粟島汽船(株)に勤務する40代の総務部長・50代の課長の2名
- 自社の顧問会計事務所からの指摘・調査で発覚
- 役職手当などの名目で水増しした給与改定通知書を偽造⇒給与支払を担当する事務職員へ渡し、不正受給していた
- 期間は2020年3月から2022年5月の約26ヶ月間
- 金額は部長約947万円、課長約590万円(計 約1,537万円)
- あわせて他社員24名の給与の水増しも独断で指示し、2021年5月から2022年5月の間に約748万円を不正受給させていた
※ 詳細な金額については2022年7月15日時点で精査中のため、今後変わる可能性あり
給与改定通知書とは、企業が従業員に「給料が〇日からこの金額に変わりますよ」と知らせるための書類です。
雇い入れ時以外は発行義務がないため、見慣れない人も結構いるかもしれませんね。
今回の事件はその給与改定通知書を偽造し、不正受給をしていたようです。
しかし、自分たちだけでなく、他の社員にまで不正受給させていたんですね。なぜなのでしょうか。
なぜ不正受給が行われたのか?
不正受給について、当の部長は
と話しています。
また、課長は
と話しているそうです。
仕事内容と給与のバランスに不満があったのでしょうか。会社のお金を何の根拠もなく多く懐にいれるなんて、たとえ上司の指示でも私なら怖くてできません…。
また、自分と課長以外の他社員24名にまで不正受給させていたことについては
と、話しています。
粟島汽船では船の運航日程を調整するなど残業代を少なくすることで、経費削減を目指す取り組みをしていたそうです。
残業そのものを削減できれば、給与明細上の金額も当然減るでしょう。もし残業が常態化している職場だったなら、最初は毎月の給料が減ったような錯覚するかもしれません。
だからといって、理由のない手当を増やしていいわけはないんですけどね。
今後の対応
粟島汽船は今回の不正受給されたお金について、
- 総務部長・課長へ返還を要求、未回収分は約543万円(部長:約534万円、課長:約9万円)
- 他社員へ不正に支給された分については返還要求の予定
- 刑事告訴を視野に今後も全容解明に向けて調査していく
上記のように発表しています。
返還された不正受給のお金や未回収分については誰がチェックして処理するのか…きっと企業内はしばらく落ち着かないでしょうね。
また、再発防止に向けた第三者委員会の設立や人員体制の見直しなど健全な経営の確立へ取り組んでいくとしています。
粟島汽船では、例にもれず新型感染症の影響で2020年に過去最大の赤字を記録。
この状況を救うために同年行われたクラウドファンディングでは、目標額の一千万円を大きく超えた約1,600万円が集められています。
これだけ多くの人に愛される粟島とその旅客船、今後信頼を取り戻すべく頑張っていってほしいですね。
粟島はどこにあるの?観光スポットやグルメを調べてみた
恥ずかしながら、私は今回のニュースで粟島のことを初めて知りました。
新潟県北部から日本海へ繰り出した先にある、ちいさな島。緑があふれ、美しい海を望めるという粟島は一体どんなところなのでしょうか。調べてみました。
粟島ってどこにあるの?どんなところ?
JR東京駅からJR新潟駅まで上越新幹線で約2時間、そこからJR村上駅へ移動し、さらにタクシーで15分ほど。
たどり着いた岩船港から高速船やフェリーで向かった先に粟島はあります。
粟島はこぢんまりとした離島で、およそ3時間もあれば島の周囲約23kmを1周ぐるっと自転車で回れるぐらいの大きさです。
粟島唯一の自治体である粟島浦村(あわしまうらむら)は、人口353人(令和2年度国勢調査より)。
東側の内浦と西側の釜谷の2つの集落からなり、島全体が瀬波笹川流れ粟島県立自然公園の一部でもある大変自然豊かな場所です。
年間約2万人の観光客が訪れる粟島浦村には、島全体で民宿や旅館など25箇所、売店や食堂が16箇所あります。港の近くには大人400円で利用できる温浴施設(おと姫の湯)も。
5月・8月が特に混むようなので、気になる人は早めに宿泊予約をすませておくと安心です。
粟島の観光スポット
比較的穏やかな時期が多い粟島では海の幸・山の幸が豊富なほか、雄大な自然と触れあう機会がたくさん設けられています。
粟島で体験できること
- 穴釣り体験
- カヤック体験
- 大謀網漁見学(最盛期5~7月)
- 磯ダコ捕りツアー(期間限定)
- 釣り(船釣り・深海釣りなど)
- ひき馬・乗馬体験
- バードウォッチング
- トレッキング
- サイクリング etc
また、島のあちこちに現地ならではの観光スポットや自然を楽しめる場所が用意されています。
島ではレンタサイクルのほか、コミュニティバスや観光ルートバス(予約制)もあるので島中行ったり来たりしても楽しそうですね。
粟島の観光&レジャースポット
- 内浦・釜谷海水浴場
- 内浦・釜谷キャンプ場
- あわしま牧場
- 鳥崎・矢ヶ鼻展望台
- 塩竈六社神社
- 八所神社
- 粟島浦村資料館
- 漁火温浴 おと姫の湯
- 県有形文化財「板碑」
- 句碑
- 県有形文化財「やす突き観音」
- 野馬公園 etc
気になる粟島グルメ
観光地といえば、やっぱり気になるのはご当地グルメですよね!海にも山にも恵まれる粟島には、鮮度のよい地魚や現地特有の料理に出会えます。
粟島の代表グルメ・特産品 ※()内は旬の時期
- 鯛(5~6月)
- アワビ・サザエ
- 塩辛煮
- 冷し汁
- わっぱ煮(4~11月)
- イモダコ(9~11月)
- づんだ豆アイス
- 青さのり
- 地のり・地わかめ
- 干しダコ
- 地魚の干物
- エイヒレ
- もずく
- 清酒あわしま
- じゃがいも焼酎んっぽん etc
1点注意したいのは、お店の営業時間です。早いと15~17時には閉まってしまうお店もあるので、買い物したい人は事前にチェックして行く方がよいでしょう。
粟島は移住者も受け入れている?
粟島では、移住者の受け入れを行っています。2022年1月時点で、住民全体のおよそ2割前後が移住者(新潟県粟島浦村公式noteより)とのこと。
現在も、移住希望者へのサポートや移住者を受け入れるための生活環境の整備を推し進めています。
島内の生活環境
- 交通:自家用車・自転車・コミュニティバス(島内の主な移動手段は自転車・徒歩)
- 買い物:スーパー(1軒)・個人商店(2軒)
- 住宅:公営住宅(23戸)・他空き家など
- 水道:上下水道完備
- 学校:小中学校(1校)・高校はない
- 金融:郵便局・粟島浦漁協同組合
- 医療:診療所(1箇所)
- 産業:漁業・観光業・再生可能エネルギー産業
ただし、移住を希望すれば必ず叶うというわけではないようです(2022年1月時点)。
移住にはまず移住者のための住居が必要ですが、空き家整備や村営アパートの新設は一筋縄ではいかないもの。
上下水道施設など大規模工事が必要になる部分もあるので、できる範囲から順番に取り組んでいるそうです。
現在用意されている村営住宅は転職を伴う移住者が優先なので、転職+移住が粟島移住への一番の近道かも?
移住を少しでも考えている人は、まず粟島浦村の専用窓口へ相談してみるのがよいでしょう。
また、小中学生限定で、粟島浦小中学校に入学・転校を希望する子供を対象とした「しおかぜ留学」制度があります。
島内にある寄宿舎で同じ留学生たちと共同生活をしつつ、馬との触れあいで命の大切さを学んだり、職場体験で地域との交流を深めたり…。
島の誰もが顔見知りな生活空間で、密度の濃い経験に巡り合うことができそうですね。
まとめ
不正受給なんて不祥事があっても、粟島の雄大な自然やその美しさが変わることはありません。
観光産業や移住者の受け入れが今後の粟島のより良い発展へつながるよう、願っています。