私たちが生活する上で避けては通れない「ゴミ」について、とある街ではこんな問題が起きているようです。
北上市ごみ袋「高い」と不評 処理費上乗せで… 減量や財源確保になるけれど https://t.co/WYgqzbmGvL
— 河北新報オンラインニュース (@kahoku_shimpo) July 10, 2022
ゴミ袋が高くて不評?とはどういうことなのでしょうか。不評をよんだ原因は?詳しくまとめてみました。
岩手県北上市ではゴミ袋が高いと不評!その原因は?今後はどうなる?
岩手県北上市であがる「高い」「不公平だ」という声。その声の原因は…なんと生活に必須なゴミ袋でした。
ゴミ袋がなぜ市民から不評をかっているのか?市はなぜ市民から不満が出るようなゴミ袋の採用を推し進めるのか?今後はどうなっていくのか?
詳しく調べてみました。順番に見ていきましょう。
岩手県北上市ってどんな街?
岩手県北上市(きたかみし)は、岩手県南西部にある人口約9.3万人の街。東西に和賀川・南北に北上川が走り、その合流地点にある北上市は自然豊かな場所になっています。
一方で、東北・秋田自動車道や東北新幹線など流通拠点としての側面も強く、180社以上の企業の誘致に成功。
東北有数の工業集積地として発展しつづける、県内でも数少ない人口右肩上がりの街なんです。
また、自然や都市、観光や経済がうまく調和する北上市は、その魅力から「住みよさランキング」で9年連続岩手県内1位に選ばれています(2018年時点、非公表の2011年除く)。
市中心部の北上駅前には集合住宅やホテルが立ち並ぶなど、今も利便性を上げ続ける北上市。今後も住みよい街の実現へ尽力していくことでしょう。
北上市のゴミ袋は不評な理由
そんな住みやすさ県内No.1!のはずの街で、実は住民全体から不満が出ているんです。その原因は…「ゴミ袋の値段」。
岩手県北上市では、県内で唯一「指定ゴミ袋(有料)」を実践しています。この指定ゴミ袋の値段が高すぎるのでは?と市のやり方が不評をかっているのです。
北上市では集積所に出す家庭から出るごみのうち、可燃ごみと不燃ごみについては市指定のゴミ袋で出す必要があります。可燃ごみは黄色、不燃ごみは水色のゴミ袋。
「値段の割に低品質」なんて声もあがる有料指定ゴミ袋の値段は、以下のとおり。
- 10L:10枚150円
- 20L:10枚310円
- 30L:10枚470円
- 40L:10枚630円
※全て税込、可燃・不燃共通
可燃ごみは週2回、不燃ごみは週1回ですから、仮に毎回必ず1袋は出すとして1週間に最低3枚は必要です。単純計算で毎月12~13枚。
1~2人暮らしなら最低枚数で済みますが、ファミリー層など4人以上の家族ではもっと必要になることは用意に推測できます。
ゴミ袋のサイズ一覧
※メーカーによって多少サイズに差異があります。
- 10L:400mm×500mm(2Lペットボトルが2~3本はいる大きさ)
- 20L:520mm×600mm(ひざ丈程度の高さの室内用ゴミ箱にあう大きさ)
- 30L:500mm×700mm(股下程度の高さの室内用ゴミ箱にあう大きさ)
- 45L:650mm×800mm(一般家庭で最も使われる大きさ)
最もよく使われる45Lに近い40Lを毎月12枚使うとすると、半年で3,150円の出費。ごみを出すために1ヶ月で約500円かかる計算になります。
1ヶ月に500円って、地味に大きいですよね。ワンコインランチを1回楽しめちゃいます。「新型感染症の影響で苦しい家計がさらに圧迫される」といった声も、実際にあるようです。
さらに、ここに「現在、県内でごみを出すのにお金がかかるのは北上市だけ」という事実が加わります。
すぐ隣の花巻市では1枚10円程度、しかも指定ではなく、あくまで推奨ゴミ袋。盛岡市に至っては、ゴミ袋の指定が「透明or半透明であればOK」です。
目と鼻の先の地域では無料なのに「なぜ自分たちだけ?」という思いが、住民に不満をより強く感じさせているのかもしれません。
北上市はなぜゴミ袋を有料にしたのか
なぜ、北上市では家庭ゴミの収集を「有料指定ごみ袋のみ」としたのでしょうか。
ごみ処理費用の一部をゴミ袋代へ価格転嫁=手数料化すれば、住民から不満が出ることは容易に想像できたはずです。
北上市は、この理由について「なぜ北上市のゴミ袋は高いのか?」と題した政策レポートを公開しています。
そのレポートによると、ゴミ袋有料化には以下のような経緯があったようです。
- 平成10年から9年間で北上市の家庭ごみ排出量は3,697tも増えていた
- 北上市の人口も右肩上がりに増えていた
- このままではごみ処理費用の増加や焼却場や最終処分場のキャパオーバーも危ぶまれる
- ごみ減量と処理費用の抑制、施設の負担を軽減するために市民の皆さんに協力をお願いしよう
人が増えれば、ごみも増える。それに伴い、ごみを管理する側の負担も増えてきて…ということだったんですね。
そして、ごみ処理費用を手数料化するにあたり、北上市では3つのねらいを定めました。
ごみ処理費用の手数料化による3つのねらい
- ごみの排出量を減らす意識を市民に持ってもらい、行動を促す
- ごみの排出量に比例した処理費用の負担となる仕組みの構築
- 手数料収入で補填できた財源を他の政策で活用
ごみの全体量を減らすこと、ごみ処理費用の負担を公平化する仕組みに変えること、他の政策を推し進める糧とすること。
この3つを軸に、北上市は平成20年12月より「ごみ処理費用の手数料化」を実践しました。
その結果、なんと導入前の平成19年度と比べて完全手数料化した平成21年後の家庭ごみ排出量は3,233tも減ったそうです。同時に、手数料化による歳入増加から財源も無事確保。
北上市の目標は見事達成されたといって差し支えないでしょう。すごい。
そして、有料指定ゴミ袋は「市も市民も持続可能な仕組み」として無事日々の生活にとけこみ、今も運用が続けられています。
ゴミ袋の値段は今後どうなっていく?
2022年7月時点、ゴミ袋の値上げに関する情報は出ていません。
しかし、人口増加など家庭ごみ排出量がまた増えることで、ごみ処理費用の負担が更に増す可能性がないとは言い切れないでしょう。
また、手数料化によって上がった市民の不安の声に対しても、フォローと対策を続けていく必要があります。
北上市で実際に行われたフォロー・対策
- 費用負担による家計への圧迫 ⇒ 資源ごみや子育てで出るおむつは無料で回収
- ごみ処理費用から逃れるための不法投棄の増加 ⇒ 平成18年度から専任指導員の配置と定期的なパトロールを実施
市民の生活に過度な負担をかけず、仕組みによる犠牲が放置されないように。
さらに「高い」ゴミ袋にならずにすむよう、市と市民で協力して取り組んでいく必要がありそうです。
ごみ袋代節約のために知っておきたい3つの方法
岩手県は北上市で有料指定ゴミ袋を採用していますが、実は全国規模で見るとごみ処理費用手数料化の割合は堂々のワースト1位。
他の都道府県では、すでに積極的な有料指定ゴミ袋の採用を推し進めているんです。
有料指定ゴミ袋を採用する市町村の割合(2018年度時点)
【100%】
- 鳥取県
- 島根県
【80%~99%】
- 北海道
- 山形県
- 新潟県
- 石川県
- 岐阜県
- 和歌山県
- 香川県
- 愛媛県
- 高知県
- 福岡県
- 佐賀県
- 長崎県
- 大分県
- 沖縄県
今、あなたが住んでいる地域ではどうでしょうか?たとえ今はまだ有料指定ゴミ袋がないとしても、その時はそう遠くない未来に訪れるかもしれません。
いつかのために、今からできるゴミ袋代を節約する3つの方法についてご紹介していきますね。
可燃ごみから資源ごみへ
何気なく捨てている可燃ごみ、実は資源ごみとして捨てられるものが混ざっていませんか?
- その紙ごみ、資源ごみで出せないか?
- その衣類や布類は本当に可燃ごみ?
細かな分別ルールは各自治体によりますが、可燃ごみはきっちり分別することで資源ごみとして捨てられるものがかなり存在します。
- ラップのケース・芯
- トイレットペーパーの芯
- 手提げ紙袋
- お菓子やアイスの空き箱
- 包装紙
- カタログ
- チラシやダイレクトメール
- 洗濯すればまだ着られる衣類 etc
「可燃ごみで捨てられるんだから可燃ごみでいいや」と言わず、是非捨てる前に一度確認してみてくださいね。
自治体のごみ処理施設を調べてみよう
各自治体HPには、必ずごみ処理施設(環境事業センターなど)の利用案内が載っています。
直接ごみ処理施設へごみを持ち込む分は、有料指定ゴミ袋にいれる必要がありません。
引越しや断捨離時など、ゴミ袋を何枚も使うような大量のごみがある時はごみ処理施設への持ち込みも検討してみましょう。
ほとんどのごみ処理施設では、持ち込んだごみの重量で手数料が決まります。金額については自治体ごとに違うので、お住いの地域の自治体HPを確認してみてくださいね。
ちなみに、私の地元では、
- 車にごみを積んでいく
- 車ごと重量計測
- ごみを指定の場所でおろす
- 車ごと再度計測
- 差分の重さから手数料を計算・支払
こんな感じでした。お代も数百円程度です。ご参考までに。
持ち込めるごみの種類など、自治体によって結構ルールが違うので必ず事前の確認をオススメします。
引越や罹災時限定とするところもあるので、ご注意ください。
有料指定ゴミ袋のない地域へ引っ越す
身も蓋もないですが、有料指定ゴミ袋のない地域への引越すことも1つの手です。
冒頭で、有料指定ゴミ袋を採用する市町村の割合が高い地域をあげましたが、もちろんその逆な自治体もまだまだ存在します。
引越しの機会があれば、ごみ処理費用の手数料化がまだ地域の10%にも満たない地域を検討してみるとよいでしょう。
ただし、その地域もいつかは手数料化する可能性が高いことを忘れずに。その時に備えて、普段からごみの排出量を減らす意識を持つことが大切ですね。
まとめ
北上市で不評をよぶ有料指定ゴミ袋は、市や市民の協力で市全体のごみを取り巻く状況を改善していけることがわかりました。
費用負担や不法投棄など問題点はまだありますが、今後も全国で同様の動きは推しすすめられていくでしょう。
その時に置いて行かれないよう、普段の生活からごみを減らす意識を忘れずに持ちつづけたいところです。